2004年07月04日

賢者の石

最近やたらと有名なこの石を、魔法アイテムのトップバッターとして書く。
錬金術そのものについてはいずれ、別項目として書きたいと思う。

【賢者の石(別名:哲学者の石、ラピス、万能第五要素、投射の粉末】
◆出自◆
ヨーロッパ、錬金術
◆特性◆
卑金属から黄金を生成する、病人を治療する、人の精神性を高める
◆形状◆
赤い石、赤い粉末
◆解説◆
錬金術師の目標であり、手段である赤い石。製法として伝わっているのは以下の通り。
1、静かな研究室を用意し、生成に用いる器具を自作する。また、惑星の配列が吉相であることを確認する。
2、まず「金」「銀」を純化する。純化には二つを溶解させ「塩」を抽出し結晶化させてから、加熱後分解する。金の純化には「アンチモン」、銀の純化には「鉛」が触媒として使用される。最終的に「硫黄」「水銀」を抽出する。(ただし、硫黄と水銀が入手出来るならばそれを使っても良いらしい)
3、「哲学の卵」(「ヘルメスの壷」「哲学の壷」とも)と呼ばれる小さな球形のフラスコに「硫黄」「水銀」「塩」を入れて加熱する。
加熱は四段階に分かれており、第一段階が60〜70度、第二段階で113〜447.7度(硫黄の融点と沸点)の間、第三段階が232度(錫の融点)より少し低いくらい、第四段階が327.5度(鉛の融点)より少し低いくらいにするとよい。
哲学の卵の中身は、黒→白→赤と変化する(白色の段階でやめると銀を生み出す「白い石」になる)。
4、哲学の卵を割り、賢者の石を取り出す。使用する前に融けた金と混ぜ合わせると質が高まる。
◆補足◆
賢者の石というのは物質では無く概念であるという解釈も有る。錬金術師が目指すのは精神的な高みであり、錬金術を学ぶことによって自然の摂理、真理を見い出すのが目的だともされる。
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2004年07月03日

ミルメコレオ

古今東西問わず想像上の動物には、現実の動物の一部分を合成したものが多い。その中でも今回は組み合わせの馬鹿馬鹿しさでは上位にランキングするであろうこの幻獣を御紹介する。

【ミルメコレオ】
◆出自◆
『旧約聖書』の誤訳から派生。フローベール『聖アントワーヌの誘惑』
◆容姿◆
体の前半分が獅子、後ろ半分が蟻で、性器が逆向きについている
◆解説◆
『旧約聖書』の「ヨブ記」第4章11節に「雄獅子、獲物なくして滅べば」というフレーズが有る。
ヘブライ語原典ではこの「獅子」という単語が「layish」となっているのだが、この語を「獅子」の意で使うことが珍しかったため、七十人訳ギリシャ語聖書は翻訳の際、アラビアの獅子の名、ミュルメクス(myrmex)を付け加え「ミュルメコ獅子」なる語をつくり出した。
ところがギリシャ語でミュルメクスは蟻を意味した。その為、「蟻獅子、獲物なくして滅べば」という誤訳が成立してしまい、それがミルメコレオなる蟻獅子の幻想を生み出した。
さて、そのミルメコレオだが、獅子が蟻の卵を妊娠させると生まれるという。
父親が肉を食べる獅子、母親が穀類を食べる蟻である為、母親の性質の為に肉が食えず、父親の性質の為に穀類も食えず、結局餓死してしまうのである。まさに「獲物なくして滅ぶ」わけである。
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2004年07月02日

月読命

今宵は満月。窓から月を眺めつつ、我が国の月神、月読命について書く。

【月読命(ツキヨミノミコト 別名:月弓尊、月夜見尊)】
◆出自◆
記紀神話(日本神話)
◆性格◆
月神、農耕神、海神、卜占神。荒ぶる男神。
◆解説◆
黄泉の国から帰還した伊邪那岐神が禊をした際、右目から生まれた三貴士の一。
太陽神である天照大御神が皇祖神として盛大に奉られるのに対して、月読命はやや影が薄い。
名称である「月読」の「ヨミ」は月の満ち欠けを数えるの意で、暦のことでもある。暦を読み解くことから、農耕や占いにも関わりのある神である。
農耕神としての性格は、食物神である「保食神(ウケモチノカミ)」を殺害するというエピソードが良く表している(『日本書紀』)。
月読命は姉の天照大御神の使いで保食神の元を訪れた際、保食神が口から食べ物を吐き出しているのを見て「汚らしい」と怒り、殺してしまう。その結果、死んだ保食神の身体からは五穀が生じる。神の死体から穀物が生じるというのは全世界に遍在する典型的な穀物起源神話である(ちなみにこの非道な振る舞いに怒った天照大御神は、月読命に「汝は悪き神なり、相見るべくもあらじ」と言い、以後、二神は昼と夜に分かれて住むことになった)。
月の満ち欠けが海の干満に影響することから月読命は海神ともされ、『古事記』では伊邪那岐神から蒼海原の統治を直接命じられている。
さらに月の満ち欠けが「死と再生」「老いと若返り」を想起させることから、月神が若返りの水をもたらすという信仰が古くからあった。現在も正月の「若水汲み」の行事にこの信仰の名残りが伺える。
◆補足◆
月読命は一説に農事を卜する職の神格化された神とも言われる。
『古事記』での穀物起源神話は須佐之男命が大気津比売神(オオゲツヒメノカミ)を殺してしまうという話である。この為、元来月読命と須佐之男命は同一神だったのではないかという説もある。
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2004年07月01日

ケット・シー

今日は可愛い猫の妖精、ケット・シーについて。

【ケット・シー】
◆出自◆
イギリスの民間伝承
◆性格◆
知的な猫
◆容姿◆
胸に白い部分のある黒猫。瞳は緑色。
◆解説◆
スコットランド高地地方を中心に、イングランド・アイルランド・北欧等にも出没する、言語を解する妖精猫。
気配を消すことが得意で、音を立てず、姿も見られずに闇から闇へと移動することができる。普段は普通の猫のふりをして人間に混じって暮らしているが、慌てるとうっかり人間の言葉を話したり、後ろ足で二足歩行したりする。
人間に危害を加えることは少ないが、虐待を受けると牡牛程の大きさになって、虐待を加えた人間を自分達の王国へ攫ってゆくという。
◆補足◆
シャルル・ペローの童話『長靴をはいた猫』のモデル。同じくスコットランドには犬妖精の「クー・シー」もいる。
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2004年06月30日

ヒポグリフ

「ハリー・ポッター3」を観てきたので、今日はヒポグリフについて。

【ヒポグリフ】
◆出典◆
ルドヴィコ・アリオスト『狂えるオルランド』
◆性格◆
空を飛ぶことのできる、優秀な戦馬
◆容姿◆
鷲の頭と鈎爪の有る前足と翼を持つ馬
◆解説◆
グリフィンの牡が、普通の牝馬と交配することによって生まれる。氷に閉ざされた北方の山深い国に棲むとされているが、片親がグリフィンな為か、太陽のシンボルとされることもある(グリフィンは太陽に関連する二種の動物、ライオンと鷲の掛け合わせ)。その飛翔力は強く、月まで行くことも可能。
◆補足◆
もともとはローマの詩人ウェルギリウスが、叙事詩『アイネーイス』の中で「不可能なこと」の比喩に「グリフィンと馬との交配は、鹿と犬が一緒に水を飲むのと同様に有り得ない」と用いたのが始まり。
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2004年06月29日

コキュートス

毎日暑いので、少しでも涼しいことを考えてみる。

【コキュートス】
◆出典◆
ダンテ『神曲』
◆性格◆
地獄の最下層、氷地獄
◆解説◆
堕天使ルシファーが囚われている地獄の最下層。ルシファーを中心に外側から「カイーナ」「アンティノラ」「トロメア」「ジュデッカ」の4圏から成る。
「静かだった。どこまでも静かだった。音さえ凍りついていた。透き通る闇の中を、針のような風だけが、光を殺して突き抜けた。全てが凍りついていた」(ダンテ『神曲』 谷口江里也/訳)
中心にいるルシファーが三対六枚の翼を羽ばたかせることによって、凍てつく風がコキュートスを巡り、全ての罪人を凍り付かせている。
◆補足◆
ギリシャ神話の冥府に同名の「コキュートス川(嘆きの川)」という川が有る。これはステュクス川(憎しみの川)の支流のひとつで、アケロン川へ流れ込んでいる。ダンテの神曲ではステュクス川はステュクスという沼地になっているので、コキュートスもギリシャ神話の名称を元に再構成されたものと思われる。
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2004年06月28日

九尾の狐

今回は超有名妖怪「九尾の狐」にスポットを当ててみる。

【九尾の狐】
◆出自◆
『山海経』
◆性格◆
人を騙す、人を喰らう、瑞兆
◆容姿◆
白面金毛九尾の狐。絶世の美女に変化する。
◆解説◆
『山海経』においては青丘国(せいきゅうこく)に住む九本の尾を持つ狐。赤子の泣き声のような声をしており、人を喰らう。逆に、九尾の狐の肉を食べれば蠱毒(一種の呪い)に害されることが無くなるという。
「九尾の白狐を見たものは王になる」という歌もあり、九尾の白狐が尾を振るのを見た禹は予言の通り王になった。瑞兆をもたらすものともされることがあるようだ。
よく『封神演義』の妲己はこの九尾の狐と解釈される。江戸時代の絵師鳥山石燕の『今昔画図続百鬼』玉藻前の項には「瑯邪代酔に古今事物項を引て云、『商の妲己は狐の精なり』と云々。その精本朝にわたりて玉藻前となり、帝王のおそばをけがせしとなん」とある。本朝で二人が結び付けられ、玉藻の前が九尾の狐であったことから、妲己は遡って九尾の狐とされたようだ。しかし、原典の『封神演義』の妲己には「千年妖狐」「狡猾的狐精」の記述のみで、九尾の記述は無い。
狐がいかにして魔力を得て行くかには『太平広記』に詳しい。「狐五十歳。能変化為婦人。百歳為美女。為神巫。或為丈夫與女人交接。能知千里外事。善蠱魅。使人迷惑失智。千歳即與天通。為天狐。」(狐は五十歳で変化して婦人になれる。百歳で美女、神巫になり、あるいは丈夫となって女人と交接する。よく千里の外の事を知る。よく蠱魅し、人を迷惑失智させる。千歳で天と通じて天狐となる)(『太平広記』巻四四七・説狐)
◆補足◆
日本版九尾の狐「玉藻の前」は鳥羽天皇の治世に現れ、国家転覆を企んだが、陰陽師安倍泰親に正体を見破られ、逃げた先の東国下野の那須ケ原で三浦介義純に射殺された。
その死体は毒ガスを発する「殺生石」となって現在観光名所になっている。
posted by わーむうっど at 22:51| Comment(3) | 妖怪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年06月27日

オシラ様

今日は一日の生活の中で「養蚕」の話題が出たので、養蚕の神「オシラサマ」について書く。

【オシラ様(別名:オコナイ様、オシンメ様、カバカワ様、等)】
◆出自◆
東北地方中心に広く民間信仰、柳田国男『遠野物語』
◆性格◆
蚕神、家の神、農神、福神
◆容姿◆
長さ30センチ程の桑の木に男女(姫や僧侶の場合も)、或いは馬の顔を彫りつけ(或いは墨書き)、オセンダクという布を幾重にも巻き付けた人形
◆物語◆
ある長者の家で飼われていた名馬がその家の姫(観音の申し子とされる)に恋をする。長者は怒ってその馬の首を切り、皮を河原にさらした。3/16に姫がこれを供養しに行くと、皮はクルクルと姫の身体に巻き付き、姫はそのまま昇天した。
翌年の3/16、空から白い虫と黒い虫が降ってきて桑の木に止まり桑の葉を食べた。白い虫は姫に、黒い虫は馬に似ていた。
長者はこの虫から糸を取ってさらに富みを築いたという。これが養蚕の起源とされる。
似たような話は中国の古書『捜神記』『太古蚕馬記』にも見られる。
◆補足◆
オシラ様の祭日は「オシラアソビ(オシラアソバセとも)」といい、1月、3月、9月の16日がこれにあたる。
蚕神は女神であるという信仰が根底にあり、オシラ様の祭祀はもともとその家の家刀自(主婦)がとりしきってきた。
現在はイタコが春・秋2回の祭日に「オシラ祭文」を唱えながら両手に持ったオシラ様を空中で踊らせるような仕種をする。それが終わると、村や家々の吉凶が占われる。
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ミトラス

一番初めに何を書こうかと悩んだ末、「タロットカード」の1番目に当たる「魔術師(マジシャン)」を考えてみた。
「マジシャン」の語源「マゴス(Magus)」(複数形はマギMagi)は古代ペルシャの神「ミトラス」に仕える司祭のことである。
というわけで、「ミトラス」について書くことにする。

【ミトラス(別名:ミスラ、ミトラ)】
◆出自◆ゾロアスター教『アヴェスター』、ミトラス教、『ヴェーダ』
◆性格◆
太陽神・契約神・戦神・牧畜神・使者の裁判官
◆容姿◆白い布や鎧を身につけ、赤いマントを羽織った若者の姿。マントの裏地は濃紺で、星々が縫い取られている。
または、弓矢を背負い、フリュギア帽(円錐状の長烏帽子)を頭に乗せた姿。
◆神話◆
アフラ・マズダとアーリマンの戦いによって死滅した世界に現れ「聖牛の供儀」を行い、世界を再生させた。これにより、天上の王権をアフラ・マズダより引き継ぎ、主神となった。
◆成立◆
元来はイランで信仰されていた太陽神・契約神・戦神。
インドでは契約と友愛の神「ミトラ」として『ヴェーダ』文献に登場する。
現存する世界最古の教団宗教「ゾロアスター教(拝火教)」が出現した際、他の多くの地方神とともに神話体系が整理され、「ミスラ」という名で牧畜神・契約神・死者の裁判官として善の神アフラ・マズダの下に編入される。
紀元前1世紀頃にはギリシャの太陽神ヘリオスと習合し、「ミトラス教」が成立し、主神となる。のちにミトラス教はキリスト教とともに世界を二分する宗教になる。
ミトラス教は男性のみの宗教で、ローマ帝国の兵士達に盛んに信仰される。7つの位階が有り、下から順に「大鴉」「花嫁」「兵士」「獅子」「ペルシャ人」「太陽の使者」「父」と呼ばれる。
◆補足◆
現在キリスト生誕の日とされる12月25日は、もともとはミトラス教における太陽神ミトラス復活の為の冬至の大祭である。
仏教では弥勒菩薩(マイトレーヤ)と呼ばれる。
posted by わーむうっど at 00:54| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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