2004年07月30日

モト

昨日の続きで、モトについて。

【モト】
◆出自◆
ウガリット神話
◆性格◆
死と不毛の神
◆解説◆
雨季の後には乾季が来る。モトは乾季を象徴する神である。このため、雨季を司る豊穣神バアルは神話の中で、モトに破れ去る。
その部分の物語を簡単に記す。

ヤムに打ち勝ち、支配者となったバアルは宮殿を建てる。その心に去来する心配事は彼の敵、死と不毛の神モトのことだった。バアルはモトの住処である地下の死の国に使者を遣わし、その統治する土地から離れぬ様命じる。これに激怒したモトは逆にバアルを自分の国へと招待する。バアルはしぶしぶながら死の国に赴くが、そこで死の国の食物を口にしてしまい、死の虜となる。
バアルが失われると地上には干ばつが起こり、草木は成長せず、大地は衰え始めた。
大神エルは、バアルは死んだと叫び、喪服に身を包む。しかし、兄の死を諦めきれない戦の女神アナトは、太陽の女神の力を借り、死の国からバアルのなきがらを奪還。その後、モトに戦いを挑み、彼を剣で引き裂き、肉を火にくべ、臼でひき、大地にまき散らした。
バアルはその後、死より復活する。
しかしモトもまた七年後に再び復活し、バアルに戦いを挑むことになる。

◆補足◆
この物語において興味深いもう一つの点は「死者の国の食べ物を口にしたものは死の虜となる」という考えだろう。
ギリシャ神話のペルセフォネや記紀神話の伊邪那美神にも共通する認識である。
また、処女神アナトはインドのカーリーの様に恐ろしい戦女神なのだが、太陽の力を借りて豊穣を取り戻すところなど、女神の生命力を感じさせる役割をも果たしている。魅力的な女神であると思う。
posted by わーむうっど at 23:41| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年07月29日

ヤム

バアルを書く前にヤムを紹介するハズし具合が、ここ風味かと…。

【ヤム】
◆出自◆
ウガリット神話
◆性格◆
海神(河川の神とも)。強欲で乱暴者。
◆容姿◆

◆解説◆
まずは簡単に、ヤムの出てくる神話の概説をば。

時の初めに地上の支配者を決めるに際し、雨と大気の神バアルと海と河川の神ヤムが名乗りを上げた。結局、大神エルによって王に選ばれたのはヤム。
しかしヤムは王になるやいなや暴虐の限りを尽くし、法外な貢ぎ物を要求しては神々を困らせた。誰もがヤムの力を恐れて戦うことを尻込む中、女神アスタルテが懐柔を試みようと立候補する。アスタルテの美しさに心を奪われたヤムは、彼女を所望し、その話を聞いたバアルはヤムとの戦いを決意する。
力で勝るヤムと戦う為、アスタルテの助言を受けてバアルはコシャル・ハシスという技術神に、遠くから投げ付け、的を外れた場合は自動的に手許に戻る二本の魔法の棍棒(雷光の象徴であるとされる)「駆逐者」と「反撥者」を作らせた。
駆逐者は的を外れたが、反撥者は見事ヤムの体を打ち据え、これを打ち倒すことに成功する。

天の水の神と地の水の神、どちらが地上の覇権を得るかという物語になっているが、シリア・パレスチナにおける季節の移ろいを説明している自然神話でもある。
今回はその前半部分で、雨の力が最大になり、河川をねじ曲げる季節までの部分なのだが、その後、バアルの前には新たな敵、死と渇きの神モトが立ちふさがることになる。
posted by わーむうっど at 22:52| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年07月28日

シンテオトル

トウモロコシの美味しい季節になった。アステカの神々に思いを馳せてみる。

【シンテオトル(センテオトル)】
◆出自◆
アステカ神話
◆性格◆
トウモロコシの神
◆容姿◆
トウモロコシの穂軸の頭飾りをつけた若々しい姿
◆解説◆
大地の女神トラソルテオトル(一説にチコメコアトル)の息子で、ケツァルコアトルの化身の一つ。雨の神トラロックの庇護を受けている。
トウモロコシを主食としていた古代アステカでは重要な神で、広く信仰されていた。四月になると人々は、実り豊かな季節を願うため、葦にたらした血を家々の入り口においてこの神に捧げた。
また、ヨワルテウクティン(9人の夜の神々)の一人。マヤではユム・カアシュと呼ばれる。

posted by わーむうっど at 22:43| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年07月27日

マンドラゴラ

有名魔法植物。ハリポタにもマンドレイクの名で登場したので、御存知の方も多いのでは。

【マンドラゴラ(別名:マンドレイク、アルラウネ、曼陀羅華)】
◆出自◆
ヨーロッパ民間伝承
◆性質◆
基本的には薬草。呪いの形代や金銀増殖の呪術に使用されることも。万能の触媒として魔術師に珍重される。
◆形状◆
オカルト関連書物では、根が人の形をした植物として描かれる。性別の違いがある。
また、同名の実在植物もある。イタリア〜ギリシャ、小アジアに分布するナス科の多年草で、葉は卵型、花はナスのそれに似る。果実は赤色でトマトに似ており、根は中央で裂けている。強い毒性があるが、適量を守れば麻酔・鎮静剤になる。
◆解説◆
マンドラゴラの候補とされる薬草は幾つか存在し、実際に薬や毒として利用されてきた。だが、魔術書などで見られるそれは、魔術的要素が付与されて一人歩きをしている。
マンドラゴラはペルシャ語で「愛の野草」を意味し、その名の通り媚薬としてヨーロッパに紹介された。
『旧約聖書』創世記(第30章14〜16節)ではレアが、このマンドラゴラの果実を夫ヤコブに食べさせて思いを遂げている。
ドイツでは「アルラウネ」とも呼ばれる。「秘密に通じている」の意で、人間のように歩き回ることができ、持ち主に未来を教え、あらゆる質問に答えることが可能とされた。
きちんと世話をすれば、富を増やしてもくれる。人型をしていることから一種の精霊のように考えられてもいたようだ。
マンドラゴラの育成には特殊な条件が必要で、死刑台の傍に生え、死刑囚の排泄物や無実の死刑囚の涙で育つとされる。
地面から引き抜く際には金切り声をあげる。これを聞いたものは即死してしまう。その為、マンドラゴラの採取には犬の首とマンドラゴラを縄で結び、犬を走らせて引き抜くという方法が考え出された。
◆補足◆
「栄光の手」という魔術がある。死刑囚の手を切り取って乾燥させたもので、その手に蝋燭を持たせるか、指に直接火を灯すと周りにいるものを深い眠りに落とすことができるという魔術だ。実はこの「栄光の手」は、マンドラゴラのフランス語形「マンドラゴール」をイギリス人が「マン・ド・グロワール(Main de Gloire 栄光の手)」と勘違いして誤訳(Hand of Glory 栄光の手)したことが始まりだという。
posted by わーむうっど at 22:18| Comment(0) | 魔導具 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年07月24日

ウロボロス

昔、こればかりノートの端に落書きしていたことが…。

【ウロボロス】
◆出自◆
ヨーロッパ
◆性格◆
無限。一にして全。
◆容姿◆
自分の尾を噛む蛇。
◆解説◆
古代ギリシャで、大地を取り巻く大洋の象徴として地図に描かれた。無限の象徴でも有り、万物の中に存在し、それらを結び付けるもの。
錬金術では二尾が互いに尾を噛み合う図が多く用いられる。それらは液体の加熱・気化・冷却・再液化という、完結しては新たにくり返す純化のプロセスを象徴する。
◆補足◆
裏づけは取れなかったのだが、北欧神話の世界蛇ヨルムンガンド(ミドガルズオルム)との関連が考えられる。ヨルムンガンドも世界を取り巻く程大きく、また、ラグナロク(神々の黄昏、最終戦争)の時まで自分の尾を口にくわえて海の底に身を横たえている。
posted by わーむうっど at 19:24| Comment(0) | 幻獣 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年07月23日

ルンペルシュティルツヒェン

こうさぎに口走ってもらいたいので、今日はルンペルシュティルツヒェンについて。

【ルンペルシュティルツヒェン】
◆出典◆
『グリム童話』
◆性格◆
そこそこ親切、やや間抜け。ギブアンドテイクが信条。
◆容姿◆
小人
◆解説◆
グリム童話55番(エーレンベルク稿では42番)に出てくる小人。
粉引きの娘が王様から「部屋いっぱいの藁屑を一晩で黄金に変えろ」という無理難題を押し付けられて泣いているところに現れ、1度目は首飾りと引き換えに、2度目は腕輪と引き換えに、3度目は生まれてくる最初の子供と引き換えに、という条件で藁屑を黄金に変える魔法をかけた。
その後娘は王様と結婚し、最初の子供が生まれる。小人は約束通り報酬を求めて現れるが、妃が必死に懇願するのでやむなく「3日後に現れる時までに、おいらの名前を当てられたら子供は置いて行く」という約束をして去る。
1日目も2日目も妃は小人の名前を当てることが出来なかったが、3日目、猟から戻った王様から聞いた話により小人の名前を知る。
「ルンペルシュティルツヒェン!」と、名前を言い当てられた小人は怒り狂って走り去る(二版以降のグリム童話では、小人は自分で自分の体をまっぷたつに引き裂いてしまう)。
◆補足◆
「名前を知ることはその対象を支配することである」
こういった信仰は普遍的に存在する。ヨーロッパでは妖精や悪魔等は特に、名前を知ることで支配できると考えられていた。
童話や昔話にはこの様に、その社会での暗黙の了解が反映されていることが多々有り、面白い。
posted by わーむうっど at 11:34| Comment(3) | 妖精 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年07月22日

バフォメット

政治的な理由で有名になった悪魔。

【バフォメット】
◆出自◆
中世ヨーロッパ
◆性格◆
魔女たちの崇拝を集める悪魔。「サバトの山羊」
◆容姿◆
頭と脚が山羊、人間の女性の体、背中に鳥の翼がある。額に五芒星。(尚、このイメージは19世紀フランスの魔術師エリファス・レヴィが描いた「メンデスのバフォメット」によるものである)
◆解説◆
良く知られている山羊頭の悪魔、それがこのバフォメットである。ただし、出自に関してはかなりあやふやだ。
名前は「マホメット」から転化したという説が有力。キリスト教の敵であるかららしい。
14世紀初頭のフランスに、バフォメットを崇拝したとされた組織があった。それが「聖堂騎士団」だ。異端審問での「バフォメットを崇拝していた」という告白により、組織は異端の罪でフィリップ4世によって潰滅させられた。
だが、これは聖堂騎士団の潤沢な資金と中央集権化を狙った国王側の陰謀だったと言われる。
審問の告白自体も、拷問の上での証言で信ぴょう性に乏しいし、関係者はことごとく処刑されてしまい、真偽は闇の中に葬られている。死人に口無し、というやつだろう。
欲に目がくらんだ人間はこのように悪魔をも道具にしてしまう。バフォメットのせせら笑いが聞こえてきそうだ。
posted by わーむうっど at 20:58| Comment(0) | 悪魔 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年07月21日

アンクー

交代制の死神というところが、風変わり。

【アンクー】
◆出自◆
フランス、ブルターニュ地方民間伝承
◆性格◆
死神
◆容姿◆
長い白髪に、背が高く痩せこけた姿。
或いは、ぐるぐると回転する頭を持ち、マントを羽織った骸骨。
右手に草刈り鎌、左手にスコップを持つ。
◆解説◆
各教区ごとに存在する死神で、その教区で年の一番初め(或いは前年の一番最後)に死んだ者がアンクーとなる。つまり、任期は1年。
六頭の黒馬が引く馬車に乗り、二人の幽霊を連れて死期の迫った者を迎えに来る。
お供のうち、一人が家の門を開け、一人が死者を馬車に詰め込む。その際、アンクーがドアをノックしたり、泣き叫ぶ声が、家人に聞こえる時もあるという。
posted by わーむうっど at 20:27| Comment(0) | 死霊 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年07月20日

スレイプニル

今日は北欧神話から、俊足なこの馬に登場いただく。

【スレイプニル】
◆出自◆
北欧神話
◆性格◆
オーディンの愛馬。世界で最も早く、あらゆるところへ行ける。
◆容姿◆
八本足の灰色の馬
◆解説◆
名前の意味は「滑るように走る者」。
牡馬スヴァディルファリとロキの間に生まれ、ロキからオーディンに贈られた。
この結果に至るエピソードでの神々の仕打ちはかなり酷い。以下、簡単にその物語を記す。

神々は争いで崩れた城壁を直す為に一人の建築師を雇うが、その建築師の請求してきた代価というのが女神フレイヤと太陽と月。そこでロキの入れ知恵で、オーディンは城壁を六ヶ月で完成させることが出来れば、と条件をつける。ただで半分まで城壁を作らせようという魂胆で、不可能だと分かった上での提示だった。
しかし、建築師はフレイヤを諦めることが出来ず、馬を手伝わせても良ければ、と申し出る。オーディンは突っぱねるが、ロキがそのくらいのことではたいした影響は無いだろうと諭し、契約が成立する。
ところが、建築師と馬は物凄いスピードで城壁を積み上げてゆき、約束の日までに完成してしまいそうになる。責任を問われたロキは牝馬に変身して建築師の馬を誘惑し、城壁の完成をさまたげた。勿論、建築師は騙されたことに怒って抗議するが、雷神トールのハンマー、ミョルニルで頭を叩き潰され、あえなく殺害されてしまう。

結局殺してしまうなら、何もロキが妨害工作をしなくても良かったような気もするが、それを言ったら駿馬スレイプニルが生まれてこなかったわけで。
もしかしたらスレイプニルの誕生を説明するために、この神話は後付けで作られたのでは無いかと、そんな風にも思えてしまう。
posted by わーむうっど at 21:45| Comment(0) | 幻獣 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年07月19日

テュルフィング

今日は魔剣の代表格とも言える、この剣のことについて。

【テュルフィング】
◆出典◆
北欧、『ヘルヴォールとヘイドレク王のサガ』
◆性質◆
鞘から抜かれる度、必ず一人の男の命を奪う。また、三回邪悪な望みを叶えるが、その後、持ち主に死をもたらす。
◆形状◆
両刃の大剣。柄は黄金。刃は鉄製だが、決して錆びず、鞘から抜くと輝く。
◆解説◆
オーディンの末裔のスヴァルフルラーメ王が二人の黒小人(ドヴェルグ)、ドヴァリンとドゥリンに鍛えさせた剣。
王はこの剣によって幾多の戦いで勝利を得るが、アルングリムという男との一騎討ちの際、剣を奪われ、結局はこの剣によって命を失う。
その後、剣はアルングリムの長男アンガンチュールが引き継ぎ、戦で倒れた彼と共に一旦墓に葬られる。
アンガンチュールの娘、男装の女剣士ヘルヴォールは父の墓からこれを手に入れる。
ヘルヴォールはただ一人、魔剣の呪いから逃れ、故郷に帰って結婚し幸せに暮らすことが出来た。
剣は彼女の二人の息子たちが引き継ぐ。しかし、弟のヘイドレクは剣に魅入られ兄を殺し、敵を切り、敵がいなくなれば味方を切り、周りの者をすべて殺して王になる。
ヘイドレク王はオーディンによって殺されることになるが、その後も魔剣は持ち主を転々としつつ、死と呪をふりまいた。
◆補足◆
マイケル・ムアコックの小説『エルリックサーガ』に出てくる魔剣「ストームブリンガー」のモデルになった剣。
posted by わーむうっど at 23:35| Comment(0) | 魔導具 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年07月18日

ヤタガラス

サッカー日本代表のシンボルマークになっていることで有名かもしれない。

【八咫烏(ヤタガラス)】
◆出典◆
『記紀神話』
◆性格◆
先導神(ミサキガミ)。太陽に関連。
◆容姿◆
三本足の大烏。
◆解説◆
『古事記』では高木大神(高御産巣日神)、『日本書紀』では天照大御神の御使いとされる。
神武天皇東征の折、熊野の荒ぶる神々に苦戦する天皇を導くべく遣わされた。また、大和国宇陀の兄宇迦斯(エウカシ)・弟宇迦斯(オトウカシ)兄弟に帰順を勧める使いともなる。
八咫烏の「咫(アタ)」は、上代の長さの単位で約18cm。
八咫は18×8=144cmということになる。ただし、八咫は「長い、大きい」という意味もあるので、八咫烏の正確な大きさとは言えないかも知れない。
賀茂建角身命(カモタケツヌミノミコト)の化身ともされる。
◆補足◆
月に兎が住むといわれるように、太陽には烏が住むという考えが古代から中国・朝鮮など、アジアの国々にあった。例えば「射日神話」では増え過ぎた太陽を射落とすと三本足の烏になったという。これが日本に伝わって八咫烏の元になったようだ。
法隆寺に伝来する国宝「玉虫厨子」にも、太陽の中の三本足の烏が描かれている。
posted by わーむうっど at 18:29| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年07月16日

フンババ

『ギルガメッシュ叙事詩』を読んだので、ボルヘスの『幻獣事典』にも載っているフンババについて書く。

【フンババ】
◆出典◆
『ギルガメッシュ叙事詩』
◆性格◆
神の森の守護者
◆容姿◆
顔の真ん中に目が一つ。恐ろしい形相。外出をする時は七つの衣でしっかりと身支度をする。
(ゲオルグ・ブルックハルトによれば)前足が獅子のそれで、角のように固い鱗で全身が被われている。足には禿鷹の爪、頭には野牛の角。尾と男根の先端が蛇の頭になっている。
◆解説◆
世界最古の叙事詩とされる『ギルガメッシュ叙事詩』で、神の森にある杉の木を守っている幻獣。
嵐のような唸り声を持ち、口からは火と疫病をまき散らす。
視線は石化の力を持っていたが、ギルガメッシュに助力を請われた太陽神シャマシュが、焼けるような風でフンババの目を塞いだため、ギルガメッシュとエンキドゥに首を落とされた。
posted by わーむうっど at 22:05| Comment(0) | 幻獣 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年07月15日

蜃気楼を、一度見てみたい。

【蜃(シン)】
◆出自◆
中国
◆容姿◆
巨大な蛤(『今昔百鬼拾遺』)。
または頭部から背中にかけて鶏冠状の赤い鰭がある大きな蛇(『本草綱目』)。
◆解説◆
中国には雉が海中に潜ると大蛤(蜃)になるという故事があり、同じく雉と蛇の合いの子である蛟(ミズチ)とも関わりを持つとされる。
蜃は気を吐いて楼閣をつくり出す。蜃気楼が自然現象だと分からなかった頃は、これが蜃気楼の正体だと考えられた。よく海上に見られたので、蜃気楼を海市(カイシ)とも呼ぶ。
◆補足◆
自然現象としての蜃気楼は、空気の密度(温度)差で光が屈折するために起きる。
posted by わーむうっど at 22:07| Comment(0) | 妖怪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年07月14日

鎌鼬

何となく好きな妖怪だったりする。

【鎌鼬(カマイタチ)】
◆出自◆
北海道〜本州、四国に伝承有り(特に雪国に多い)
◆性格◆
人を切る
◆容姿◆
鋭い鎌状の爪を持つイタチと言われるが、姿は見えない
◆解説◆
つむじ風に乗って現れ、人の体を切ってゆく妖怪。切られた時は痛みを感じず出血も無いが、後から激痛と大出血に襲われ、死に至る場合もある。
傷は概ね、下半身に受けることが多い。
岐阜県飛騨地方では三人組の神とされ、一人目が人を倒し、二人目が切りつけ、三人目が薬を塗ってゆくので出血しないのだという。
愛知県東部では「飯綱(イヅナ)」とも混同されている。飯綱使いの元から逃げた飯綱が鎌鼬になるとされる。
新潟・長野県では暦を踏むと鎌鼬に遭うとされ、古い暦の灰を傷口につけると傷が治るといわれる。
鎌鼬現象は一説に、真空状態の大気に人肌が触れて出来る傷だとも言われるが、証明はされていない。
◆補足◆
鳥山石燕はカマイタチの字に、中国妖怪の「窮奇(キュウキ)」を当てている。こちらは虎の前足に翼がついた姿をしており、善人を喰らい、悪人に褒美を贈るひねくれもの。両者は全く似ていない。
姿が見えないはずなのにイタチに似るとされるのは、『耳袋』に載っている話から。つむじ風に巻かれてくるくる廻っていた二人の子供を助け出すと、兄の背中に足跡が残されていたそうだ。
posted by わーむうっど at 22:32| Comment(0) | 妖怪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年07月13日

メリュジーヌ

クードレットの『メリュジーヌ伝説』を読んだので、今日はメリュジーヌについて。

【メリュジーヌ】
◆出自・出典◆
フランス民間伝承、ジャン・ダラス『メリュジーヌ物語』、クードレット『メリュジーヌ物語、あるいはリュジニャン一族の物語』
◆性格◆
賢明。幸運をもたらす。
◆容姿◆
優雅で美しい貴婦人。
本当の姿は、下半身が銀色と紺碧色に輝く蛇の尾で、背に翼の生えた美女。
◆解説◆
父はアルバニア王エリナス、母は妖精モルガンの姉妹プレジーヌ。パレスティーヌ、メリオールという二人の姉がいる。
母との約束を破った父王を幽閉したことで、姉妹はそろって母から呪いを受ける。メリュジーヌは土曜日の度に下半身が蛇になってしまう体となった。
妖精女王として泉のほとりに暮らしていたが、メリュジーヌが土曜日に何をしているか決して探らない、という約束を交わしたレイモンドと結婚。10人の異形にして優秀な息子を生む。
夫を助け、リュジニャン一族繁栄の立役者となるが、疑心暗鬼にかられたレイモンドが約束を破ったため、悲しみにくれて城を後にする。
その後、リュジニャン一族は急速に衰退してしまう。
メリュジーヌは「幸運をもたらす存在」であり、去ることによって幸運が失われてしまうのである。
◆補足◆
リュジニャン家は11世紀から13世紀に隆盛した実在の一族で、妖精メリュジーヌを始祖としている(リュジニャンの名はメリュジーヌから来ているという)。
覗き見をすることによって、相手の神性を知り、結果相手に去られてしまうというのは物語の類型の一つである。我が国にも記紀神話の「出産中、八尋鰐に変身する豊玉比売命(トヨタマヒメノミコト)」や、昔話の「鶴女房」など、覗き見(=約束を破ること)をタブーとする物話がある。
posted by わーむうっど at 21:33| Comment(0) | 妖精 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年07月12日

スライム

コンピューターRPGでもお馴染みのモンスター。大抵「弱い」モンスターに設定されているが、実は結構恐いモンスターだったりする。

【スライム】
◆出典◆
ジョセフ・ペイン・ブレナン『スライム』
◆性格◆
底知らずの食欲で活動する
◆容姿◆
半流動状。不定形。生きた泥の塊に例えられる。
◆解説◆
名前の意味は「汚らしい粘液」。
太古の昔から海底に棲み、あらゆる生物を消化吸収して生きてきた。何ヶ月も食べずに生きられるが、食べた直後に空腹になる。
激しい地下の爆発により、地上に放り出された。
地上では悪夢のようなスピードで動くことが可能。光と炎が弱点。
スライム型モンスターは他にも「ブロッブ(粒状の液体)」「アメーバ(不定形原生動物)」「ウーズ(ぬめりのある泥)」などの呼び名がある。
スティーブ・マックイーンの映画「絶対の危機 人食いアメーバの恐怖」のスライム型モンスターは冷気のみが弱点である。こちらは外宇宙から飛来した生物という設定で、次第に大きくなっていくところが恐い。
◆補足◆
ブレナンが『スライム』を発表したのは1930年代のアメリカで人気だったファンタジー・ホラー専門誌「ウィアード・テールズ」であるが、この雑誌では他にも様々な作家によってスライム的モンスターが生み出された。クトゥルフ神話の「ショゴス」も、その一つであろう。
余談だが…
・ブレナンの『スライム』は邦訳があり、ソノラマ文庫海外シリーズ『魔の誕生日』に収録されている。
・映画「絶対の危機 人食いアメーバの恐怖」は7/24にDVDが発売する。
posted by わーむうっど at 21:55| Comment(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年07月11日

ドッペルゲンガー

世界には似たものが三人居る…とも言われるが…。

【ドッペルゲンガー】
◆出自◆
全世界
◆容姿◆
衣服の細部に至るまで、自分と全く同じ容姿
◆解説◆
ドイツ語で「二重に出歩く者」の意。ダブル(二重体)ともいう。
もう一人の自分を見かけたり、出会ってしまう現象で、ドッペルゲンガーを見てしまった人間は遠からず死んでしまう。
全世界的に報告されている現象であり、有名人を列挙するだけでも、ゲーテ、フロイト、シェリィ、エカテリーナ女王、リンカーン、ヘミングウェイなどが、また我が国でも、清少納言や芥川竜之介などが見たらしい。
では何故ドッペルゲンガーが死の予兆であるのか。
それを説明するのにドッペルゲンガーの正体を、何らかの理由で肉体から遊離した「幽体」であるとする説がある。
これには霊魂が複数から成るという考えが元にある。エジプトでは「バー」と「カー」、中国では「魂(コン)」と「魄(ハク)」、西洋では「アストラル体」と「エーテル体」などと呼ばれる概念だ。このうち、それぞれ後者が生きている内に体から抜け出してしまったものがドッペルゲンガーとして認識されるのだという。
◆補足◆
精神医学ではこの現象を「オートスコピー(Autoscopy 自己像幻視)」といい、一種の幻覚だとしている。
幽体にしろ幻覚にしろ、ドッペルゲンガーを見るということ自体が、本人の精神状態に悪影響を与え、結果として狂死してしまう、などはいかにも有り得そうだ。
posted by わーむうっど at 21:43| Comment(0) | 死霊 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年07月10日

アヴァロン島

もうすぐ映画「キング・アーサー」が公開されるので…。

【アヴァロン島】
◆出自◆
アーサー王伝説、妖精伝説
◆性格◆
冥界、妖精の国
◆景観◆
湖と岩に囲まれた美しい島で、強風が吹くことも、雨や雪や雹が降ることも無い。
果樹の植えられた芝生、樹木の茂った窪地、奥行きの深い牧草地等が島を被い、アリマタヤのヨセフによって建てられた小さな教会がある。
◆解説◆
アヴァロンという名はケルト語でりんごを意味する。妖精(アーサーの異父姉モルガン・ル・フェイ)が治める国とも言われる。
『アーサー王の死』の中で、王は頭部に致命傷を負った際「私はこれからアヴァロンの島へ行き、この深い傷をなおさねばならぬのだ」と語り、舟に乗った。
物語の中でアーサー王の死が直接に語られない為、王を「過ぎし日の王にしてまた来るべき日の王」として、その帰還を信じる人々もいた。
アヴァロン島探しも行われ、候補地も幾つかあったようだが、1191年にイギリス南西部にあるグラストンベリーの修道院からアーサー王の墓が見つかったと公表され、教会による御墨付きを得る。アーサー王の名が刻まれた鉛の十字架や、傷痕のある頭蓋骨などが見つかり、小さな町は一躍有名になった。
グラストンベリーの東南には「ザ・トール」(小山の意)と呼ばれる標高160mほどの丘もあり、かつては湿地帯の中の島だったとも言われる。ザ・トールはもともと、先史時代に作られた宗教施設だとか、内部が空洞でドルイドの神殿があったとか、いろいろいわくのある場所であったようだ。
ただ、このグラストンベリーの「発見」は政治的・経済的背景を持つでっちあげだとする向きもあり、真偽は定かでは無い。が、それだけ人々の間でアーサー王という存在が大きかったという証明にはなるだろう。
アーサー王の憩うアヴァロン島とは、伝説を信じる人々にとって夢の島であることは間違い無い。
posted by わーむうっど at 22:03| Comment(0) | 異界 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年07月09日

パック

シェイクスピアの「真夏の夜の夢」を読んだので、今日はパックについて。

【パック】
◆出自◆
イギリス民間伝承
◆性格◆
陽気、悪戯好き
◆容姿◆
背丈は数インチ。上半身が人間、下半身が山羊で頭に角。
または、人間の姿をした小柄で毛深い生き物。
◆解説◆
「ホブゴブリン」や「ロビン・グッドフェロー」とも呼ばれる悪戯好きの妖精。
農場や民家で、人間の手伝いをする。かと思えば、バターを作るミルクの上澄みをすくったり、ビールの酵母を泡立たなくさせたりの悪戯をする。変身も得意。
また、四十分で地球を一周できる程素早い(つまり時速は約6万キロ!!)。
シェイクスピア『真夏の夜の夢』では、妖精王オベロンの従者として狂言まわしの役を果たす。
◆補足◆
「ホブゴブリン」は、イギリス妖精の中でも人間の手助けをしたり、(それほど)害のない悪戯をする程度の妖精達につけられた総称。人家やその周辺に出没する。
これに対し「ロビン・グッドフェロー」は個体名。妖精王オベロンと人間の女性の間に生まれた半妖精で、最初人間の世界で暮らしていたが、余りにも悪戯なのでオベロンが妖精界へ引き取った。
posted by わーむうっど at 21:48| Comment(0) | 妖精 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年07月08日

飯綱

今日は何となく飯綱について。

【飯綱(イヅナ)】
◆出自◆
日本、北海道、東北〜関東地方
◆性格◆
人に憑く、使役獣
◆容姿◆
体長9〜12cm。イタチに似た小動物。四脚は胴体から互い違いに出ている。手の指は5本で美しい爪がある。耳は人に似る。柔らかな体毛と帚の様な尾を持つ。
◆解説◆
飯綱使いと呼ばれる呪術師に使われ、人に憑く使役獣。飯綱に憑かれた者は過食症になったり、あらぬことを口走ったりするようになるが、その者を川に沈めると飯綱が苦しがって離れるという。
管狐(クダギツネ)とも呼ばれることがあるが、『霊獣雑記』に「近世飯綱の法といいて狐を使う者あり。伝へて聞に、至って小なる狐なりと云へり。いわゆるくだもちおさき使いのたぐひならん」とあるので、もともとは別のものだったのだろう。
飯綱の本尊は「飯綱権現(飯綱大明神)」である。伝説では嘉祥三年(850年)、学問行者が飯綱山(信州北部にある修験道屈指の名山、保食神(ウケモチノカミ)の降臨地とも言われる)で修行中、飯綱権現から飯綱の法を授かったのが始まりという。
◆補足◆
本尊の飯綱権現は、稲荷大明神と並び稲作の守護神とされる。上記飯綱山の他、関東の高尾山にある薬王院にも祭られている。
posted by わーむうっど at 20:56| Comment(0) | 妖怪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。